なぜ私は投資を始めたのか:危機感が私を変えた瞬間
1. 貯金だけが正義だった価値観
私は、親世代の価値観に基づいて「お金は銀行に預けて増やすもの」という考え方を、当たり前のように受け入れていました。特に父親は「投資はギャンブルだ」という立場を強く持っており、幼い頃からそれが正しい金銭教育だと思い込んでいました。
貯金をすることが人生の安心材料であり、銀行通帳の数字が増えることが「お金を管理できている証」だと信じていたのです。社会人になり、手取り20万円の中から少しずつ貯金を増やしていく生活を送っていた私は、それ以上を考えたことはありませんでした。
2. 1970年代の親世代が享受した「高金利時代」
しかし、親世代が生きていた時代の「貯金」という選択肢は、今とは全く異なる環境にありました。1970年代から1980年代にかけて、日本は「高金利時代」と呼ばれ、銀行の普通預金や定期預金の金利が非常に高かったのです。
当時の金利水準
以下の表は、1970年代~1980年代の日本の普通預金金利と定期預金金利の一例を示しています。
時期 | 普通預金金利 | 定期預金金利(1年) |
---|---|---|
1970年頃 | 約2.5% | 約6.0% |
1980年頃 | 約2.0%~3.0% | 約7.0%~8.0% |
1990年頃 | 約2.0% | 約5.0%~6.0% |
- 普通預金の利息
当時の普通預金の金利は2%~3%。100万円を預ければ、年間で2万円~3万円の利息が得られました。 - 定期預金の利息
定期預金はさらに高金利で、**6%~8%**が一般的。100万円を1年間預ければ6万円~8万円の利息がつき、10年間でかなりの額を資産として増やすことができました。
このような環境では、親世代にとって「お金を増やす=銀行に預ける」ことが合理的であり、リスクを取る必要がなかったのです。
3. 超低金利時代が突きつけた現実
一方、私が生きる現代は全く異なる状況にあります。1990年代のバブル崩壊以降、日本は長い「超低金利時代」に突入しました。2018年当時、私が確認した普通預金金利は0.002%。これは、親世代が享受していた利息とは桁違いの低さです。
具体的な例
- 100万円を普通預金に預けた場合の年間利息
- 1970年代(2.5%):2万5000円
- 2018年(0.002%):20円
- さらに、利息には20%の税金がかかるため、手取りはさらに減ります。この現実を知った時、私は衝撃を受けました。
4. なぜ親の価値観に従っていたのか
振り返れば、なぜ私は長い間「貯金が最善」という価値観に縛られていたのか。それは、親世代が生きた時代の影響が大きかったからです。彼らが若い頃は、銀行の金利が数%という時代で、預金だけで資産を着実に増やすことができました。彼らの世代では、投資は本当に「ギャンブル」として見られており、一般人が手を出すものではなかったのです。
しかし、現代は明らかに違います。超低金利時代の日本では、預金の増加スピードが物価上昇に追いつかず、むしろ資産価値が目減りする状況が当たり前になっています。それでも親は「貯金こそが安心」と言い続け、その教育方針に疑問を抱くことなく従っていた私は、自分で情報を得る努力を怠っていたのです。
5. 危機感が変えた私:情報を自ら取りにいくようになる
金利の低さを知った瞬間から、私は「このままではいけない」という強い危機感を抱くようになりました。それまでの私は、親の価値観に基づいて受動的にお金を扱っていましたが、ここで初めて「自分で情報を取りにいく」という行動を始めました。
最初にしたのは、金利や経済について調べることでした。銀行の金利がどれほど低いのか、なぜ利息に税金がかかるのか、物価上昇率(インフレ率)が資産価値にどんな影響を与えるのか……これらを調べるうちに、「貯金だけでは資産形成は不可能」という確信に至りました。
同時に、投資についても少しずつ情報を集め始めました。最初は不安だらけでしたが、調べるほどに「お金を増やすための選択肢は、貯金以外にもたくさんある」ということに気づきました。この気づきが、私を行動に駆り立てる原動力になりました。
6. 結婚が加速させた行動変容
このタイミングで私の人生に大きな変化が訪れました。それが結婚です。結婚を機に、家計を共にするパートナーができたことで、将来のお金について現実的な話をする必要性が高まりました。
手取り20万円の中で家族を養うこと、さらに子どもが生まれた場合の教育費や生活費をどう確保するか。それを考えると、貯金だけでは到底足りないことが明確でした。1000万円という資産も、家族を守るにはあっという間に尽きてしまう程度の額に過ぎないと痛感しました。
7. 妻との対話から得た新しい視点
幸いにも、私の妻は私より先に株式投資を始めており、貯金以外のお金の運用方法を既に実践していました。彼女からは、「貯金はもちろん大切だけど、それだけでは足りない」という現実を教えられました。
彼女は米国株やインデックスファンドに少額ずつ投資をしながら、資産を増やしていました。その姿を見て、「お金を増やすにはリスクを取ることが必要だ」という考えが、少しずつ私の中に芽生えていきました。
8. 日本の金利が少し上がったって、結局は…
最近では、日本でも利上げの動きが見られ、銀行の金利がわずかに上昇しました。それでも、普通預金の金利はせいぜい0.1%程度。仮にこの金利で1000万円を預けても、年間の利息は1万円。そこから税金が20%引かれると、実際に手元に残るのは8000円です。
この数字を見た時、「銀行にお金を預け続けるだけでは何も変わらない」という思いがさらに強まりました。預金だけでは増えないどころか、インフレで実質的な価値が目減りしていく可能性のほうが高い。投資という選択肢に踏み切る理由が、ここに明確に示されていたのです。
9. 決意の瞬間:自らの道を切り開くために
危機感に突き動かされ、自分で情報を集め、妻の影響を受けながら、私はついに「投資を始める」という選択をしました。親の価値観に反して行動することに不安はありましたが、それ以上に、「何もしないことのリスク」のほうが私を怖がらせました。
こうして私は、初めての投資に挑むことを決意しました。それが、今の私の人生を大きく変える一歩になったのです。
次回予告:初めての投資とスイングトレードの挑戦
次回はまた来週の金曜日になります。私が投資の世界に足を踏み入れ、最初に挑戦したスイングトレードについてお話しします。リスクの取り方、成功と失敗、そして学びとは何だったのか。その体験を振り返ります。
出典(参考リンク)
1. 日本銀行公式サイト
金融政策や金利推移に関する公式資料
2. 総務省統計局
日本の金利や経済指標に関するデータ